時原ひかる

「ここが今日君が夕刊を入れ忘れた斉藤さんの家だ」
 奥まった路地の一軒の家の前に大型スクーターを止めると、荒川は廊下に立たされた小学生のように顔を伏せているシンジのジャンパーを引き剥がした。
「あっ…」
 暗がりに浮き上がるような白い肌に身につけたピンク色の下着姿を晒した少年は、たまらずその場にしゃがみ込む。
 しかし、荒川は有無を言わせずその細い腕をひねり上げると、取り出した手錠を手首に嵌め、反対側を斉藤家の門につないだ。
「新聞を入れ忘れるってことは、その家が頭からすっぽり抜け落ちちまってるわけだからな」
 顔を凍りつかせているシンジに冷たい視線を向けながら、荒川はゆっくりと電柱に体を持たれかけさせて腕を組む。
「だったら、忘れたくても忘れられない記憶を刷り込めば、絶対不着は防げるっていうことだろ」
 あまりにも理不尽な仕打ちが自分の配達ミスのせいだと言われて、シンジの目に大粒の涙が浮かぶ。
「だからって、こんなひどいこと…」
 ブラとパンティーの下着姿を片手で必死に隠し、赤く腫らした目で見つめ返す少年の瞳に息苦しさを感じながらも荒川は厳しい表情を崩さない。
「配達ミスをなくすためだったら、何でもするって言ったのは君自身だぞ」
 丸裸よりも恥ずかしい格好で屋外に縛り付けられた恐怖と羞恥心でガクガクと体を震わせているシンジの姿に激しく欲情している自分を見透かされている気がして、思わず言葉が荒くなる。
「わかったら、大人しく言うことを聞くんだな」
 恥ずかしさのあまり素肌までを上気させている少年がうなずくのを満足げに眺めて、荒川はさらに過酷なセリフを口にした。
「その場でオナニーして精子を郵便受けにぶちまけろ」
 それができるまで手錠は外してやらないからな、と冷たく言い放つ荒川に、シンジは悲痛な声をあげる。
「そんな…で、できません」
 首を左右に振って拒絶するシンジにわざと大きくため息をついて、荒川は腕時計を覗き込んだ。
「早くしないと、他の販売所も配達を始める時間だ」
 そうつぶやいた途端に、タイミングよく遠くを過ぎていくバイクの排気音が聞こえてくる。
「そんな格好を誰かに見られたら…たとえ警察沙汰にならなかったとしても、うちの営業所からも出て行かなきゃならなくなるぞ」
 ずいぶん卑劣な脅し文句だと思いながらも、それをまったく表情に浮かべずに荒川は続ける。
「どうした? なんでもするっていうセリフを忘れたのか。本気で不着をなくしたいって思ってるならオナニーの一つぐらい簡単だろ」
 仕事のミスで屋外オナニーを強制するなんてまったくデタラメな理屈だが、パニックに陥っているシンジはもちろんまともに判断できる状態ではない。
「すいません。でも、本当にできないんです」
 血の気の抜けた真っ青な顔でうなだれるシンジに荒川は内心でほくそ笑んで、ゆっくりと腕組みを解いた。
「だったら、少し手伝ってやろう」
 そのままシンジに近づいた荒川は、いきなりその下半身に手を伸ばすと容赦なく股間を覆っていた布キレをむしりとった。
「いやっ」
 声を潜めることも忘れて大きな悲鳴をあげたシンジを羽交い絞めにするようにして、荒川はその萎縮しきったペニスに指を絡ませる。
「正直に言ってみろ。こんな風に恥ずかしいことをされるのが大好きなんだよな」
 小さな蕾のような仮性包茎気味の性器の皮をむくように亀頭を露出させると、すでにそこがヌルヌルの粘液に塗れているのがわかる。
 体液を潤滑剤にして指先で転がすように刺激すると、若い男性器官が熱く跳ねるように脈打つのが手のひらに伝わってくる。
「さあ、ここからは自分でやれ」
 少年の腕を導いてペニスを握らせると、荒川をサッと体を離した。
 すがるような視線で振り向いたシンジの視線を黙殺して、促すように頷いてみせると、やがて少年は手首を上下に動かし始めた。
 ──思ったとおり、こいつは真性のマゾだな。
 シンジの部屋を隠し撮りしたオナニー映像の中で、ペニスをしごきながら少年はいつも「ごめんなさい」「許してください」とうわ言のようにくり返していた。それはもちろん、手淫の罪悪感から発した言葉ではなく、自分を辱める架空の相手に対して許しを求めているのだ。
 ──こんなかわいい顔して、相当に淫乱だしな。
 少年のオナニーでもう一つ特徴的なのはペニスへの刺激だけでなく、必ずアナルに異物を挿入して行うということだ。
 最初は太目のマジックペンを肛門に突き刺して、身を悶えさせながら射精していたのだが、ある時どこからか子供の手首ほどもあるディルド──シリコン製の模造ペニスを購入してきて、その固い果実のようなお尻の中心にねじ込んでピストン運動させるようになった。
 ずっと束縛されていた田舎から解放され、一気に欲望がはじけて歯止めが利かなくなってしまったのだろう。
 監視されているとも知らず、巨大ディルドに犯されて悶える少年の姿に荒川は興奮を覚えながらも、どこか哀れな気持ちににもなっていた。
 ──そのうち、男の味も覚えるんだろうな…。
 女装も淫らなひとり遊びももうしばらくは個室の中だけで行われるだろうが、いずれ相手を求めて二丁目やハッテンバといわれる場所に出かけていくようになるだろう。
 悪い男に引っかからなきゃいいけどな、そう思いながらも、自分自身がその悪い男≠ニやらにならないとも限らない。
 ──神崎にけしかけられて、こんなイジワルな遊びをしてしまったけど…。
 深夜の配達先で強制オナニーをさせるなんて、ちょっと悪ふざけが過ぎたのかもしれないと荒川は自分を戒めた。
「ほら、クズクズしてないでさっさとイッてみせろ」
 他の新聞配達や住人が顔を出さないか神崎に見張らせてはいるが、いつ誰に見られるとも限らない。
 路地の突き当たりの家を選んで──つまりはシンジの配達ミスでもなんでもなかったわけだが、長引かせれば突発的なリスクも当然大きくなる。
「どうした。おまえの溜まったモノをぶちまけるんだ」
 ジリジリとした興奮と焦りを冷たい表情に隠しながらも、荒川は吐き捨てるように命令する。
「はい、でも、あの、どうしてもイケなくて…」
 少年もこの屈辱的なプレイから逃げ出したくて、包皮が擦り剥けるほどしごき上げている。
 が、固く張り詰めている性器とは対照的に、急げば急ぐほど快感は遠ざかっていくようだった。

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